米国 環境保護局2011年4月
トルエンジイソシアネート(TDI)と関連化合物 活動計画=[RIN 2070-ZA15]
1 概要
この行動計画は、特に住宅や学校を含む建物内部や周辺で消費者および市民に暴露をもたらすことがある製品中のトルエンジイソシアネート(TDI)およびそれに関連した化合物(付録1を参照)の使用に宛てたものである。ジイソシアネートは、職場での皮膚と呼吸器の過敏性誘起物としてよく知られており、喘息と肺の障害を引き起こし、ひどいケースでは致命的な反応があることが記録されている。この活動計画は、消費者や自営業者が未硬化の(反応していない)ジイソシアネートを含む製品(例えば、シール材と塗料噴霧材)を使用中での暴露、または一般市民がそのような製品が住宅や学校を含む建物の中や周りで使われている間に、不意うちの暴露から引き起こされる可能性がある健康への影響に焦点を当てている。このTDI化合物の検討を行うに当たり、米国環境保護庁(EPA)は、有害物質規制法(TSCA)の(セクション4、5、6、および8)の下での取り締まり活動、連邦の他の機関との協力活動、および自発的活動など、 いろいろな可能性を考えた。
Ⅱ.序論
EPAは、毒性物質規制法(TSCA)*1での既存の化学薬品プログラムを強化する米国環境保護庁(EPA)の努力の一部として、広く認められている化学物質〈MDIを含む〉の初歩的なリストに、TDIを含めることを確定した。人の血液中に化学物質が存在すること;持続性があり、生物内に蓄積し、有毒(PBT)*2である特徴;消費者が使用する製品内に含有;生産量;およびその他の類似した要因などに基づいて、化学物質を特定して行動計画を展開するためである。この行動計画は、既に可能なTDIの使用,暴露、および危険情報*3についてのEPAの初期レビューに基づいている。EPAは、毒性物質規制法(TSCA)および他の法規のいろいろな判例を考慮すると、行動計画作成にて、TDIについての可能性に取り掛かるのは適当であろうと考えた。この行動計画は、最終的な当局の決定または他の最終的な当局の行動ではなく、当局が近い将来進める予定の行動方針を記述することが目的である。この行動計画により示された通常の行動は、市民と利害関係者を含め、法規作成経過の告知と意見を通じる適切な機会を得ることを含む。同列の行動として、TDIに類似した危険と暴露懸念をもつ化学的にTDIに関連した物質であるメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)についての行動計画をも開発中である。
脚注
*1: 15 U.S.C §2601 以下参照。
*2: ポリブチレンテレフタレート(PBT)化学薬品についての情報は米国環境保護庁(EPA)ウェブサイトhttp://www.epa.gov/pbt/ にある。
*3:TDIを含む全化学物質活動計画の基礎的背景情報の最初資料は、最新報告目録(IUR)付託;中毒放出目録(TRI)報告;HPV挑戦計画への付託データを含み、 連邦政府機関関係に限らない国内および国際的専門家;OECD;SCPSP;HEC;EU等によってなされた存在する危険とリスク評価である。この活動計画に使われた重要資料の詳細は、セクションⅨ.の文献リストにある。
Ⅲ.調査の範囲
ジイソシアネート(またはイソシアネートとしても一般的に知られている)は、非常に反応性があり、多用途の化学物質であって、広範囲の営業用品と消費者使用製品がある。
ジイソシアネートの市場の90%以上は、MDIとTDIという2つのジイソシアネート、およびそれらの関連したポリイソシアネートが突出している。(Allport et al.,2003)。ジイソシアネートは特有な性質および機能的な汎用性があり、遊離したイソシアネート官能基(-N=C=O)をもっている。イソシアネートが、遊離したヒドロキシ感応基(すなわち–OH)を含む他の合成物と結合すると、それらは反応してポリウレタン・ポリマーを形成し始める。
この化学反応は、初めには遊離していた–N=C=Oグループの全てがポリマー・ネットワークの中で結合すると完了する。このプロセスは一般的に「硬化」と呼ばれる。遊離した–N=C=Oグループを含む製品は、使用の時に、反応して、「硬化する」ことを目指す。一例として、接着剤を挙げると、販売当初は、硬化されていない形で使われ、それが硬化することで、二個の木片が一つに接着する
。マットレス、枕、ボーリングボールなどのような他のポリウレタン製品は、それらが販売される以前に、完全に硬化している製品だと考えられる。完全に硬化した製品は、反応が完了しているので、不活性で、無毒であると考えられている(Krobe & Klinger, 2005)。つまりこの行動計画は反応を起こしていない未硬化製品について考えることに焦点を絞っている。
TDIとその関連したポリイソシアネート(付録1を参照)はその反応性と用途の多様性のため、応用範囲を広げ変わったポリウレタンを作るために、他の化合物と結びつけてジイソシアネートの優れた化学反応を起こすように、普通はメーカーによって調合された原材料として供給される。この応用性の広さはまた、ジイソシアネートの暴露が、小さい店からオートメーション化した生産ラインまでの広い生産施設で起こり得ることを意味する。ジイソシアネートは、皮膚および肺を過敏にする強力なものであり、また世界中で職業喘息主な原因である(国立労働安全衛生研究所NIOSH、2006)。ジイソシアネートは、建設、自動車など、他の類似した製品(これらの製品の機能的な性能の一部として最終用途反応を必要とする)において広く使われる調合製品の一部として、反応していない形でも一般に利用されている。制御された生産施設の範囲を超えておこなわれる、このような応用に当たっては、保護具の使用、封じ込め、換気、適切な清掃実施、および暴露の可能性あるすべての人の医学的監視を含んだ暴露抑制の管理と、最善の実行を注意深く見守っていなければ暴露を引き起こす可能性がある。
過去において、一般に消費者はふつう不活性で無毒の硬化したポリウレタンを含む製品に接している可能性があるが、ジイソシアネートについて、その暴露は注目されてこなかった(Krone & Klinger,2005)。しかし使用中に更に反応が進行することを目標としたものや、硬化が進行中の製品を、消費者がマーケットで買える可能性が増えてきた(消費者/一般人暴露 に関する部分の追加の議論を参照)。
たとえば、使ったときに完全には反応しないTDI成分を含んでいそうな接着封止材のような消費者製品があり、そのような製品を直接使う消費者と他人が使っている傍の人に暴露させる可能性がある(Krone,2004;Bellow et al., 2007)。更にある種の作業者(例えば自営業者)はOHSHAの暴露限界が適用されていない。また、健康と安全の訓練と化学物質の危険情報や個人用保護具(PPE)の装着を法律で要求されていないので、硬化しないポリウレタン製品に過剰に暴露されている可能性もある。
EPAは、消費者の周りで使われている製品中の硬化していないTDIの存在や、他の保護されないビルディングの居住者について、彼らを保護する指導と取締りを考えた。この行動計画は、消費者や自営業者が硬化しないTDIを含む製品を使ったときの暴露から、もしくはそのような製品を家や学校やビルディングの周りで使ったときに一般の人たちが偶然暴露したときに引き起こされるかもしれない健康への影響に焦点を絞った。
Ⅳ.用途と補充概要
MDIとTDIは、製造量が多く、特にポリウレタン製造に多く使われている、最も大規模なジイソシアネートである。2008年に合衆国は42.52億トンのTDIを要した(ACC,2009)。市場にはいろいろなタイプのポリウレタン製品があり、発泡材が最大のポリウレタン工業での代表的な分野である。発泡しないポリウレタンは塗料、接着剤、およびシール材としてTDIの一部を使用している。しかしながらそれらの製品は、全体の製品量のごく一部分にすぎない。ポリウレタンの発泡材は柔軟なものと硬いものとの2種がある。柔軟な発泡材は主としてクッション(緩衝材)に使われ、一方固い発泡剤は主として断熱材に使われる。TDI薬品は主に柔軟な発泡材に使われる。ほとんどのポリウレタン製品は、消費者に届く前に硬化されている。しかしその他の塗料や接着剤やシール材などのポリウレタン製品は、ほとんどは硬化しない形で調合された混合物として販売、使用されている。イソシアネートにさらされる仕事場に注目している研究者は、消費者によって使われているイソシアネート含有製品が増加していると記している。またそれらの研究は、居住地でのイソシアネート暴露が、イソシアネート含有消費者製品の使用と同様に、工業的暴露からも引き起こされる可能性もあると記している。
その危険性のため、製造会社は硬化しないTDIを工業的にのみ使用するようにと要求している(DOW,2009)。一般にMDIなどの芳香族ジイソシアネートが、塗料や接着剤製品のTDIと置き換わろうとしている(Ott et al,2003)。2006年の最新商品カタログ集(IUR)のデータベースによると、TDI薬品は次のような消費者向け製品で使用されている。すなわち接着剤とシール材、ペイントと被覆材、輸送製品、ゴムとプラスチック製品、木材と木製家具、および電気製品と電子製品である(EPA,2010)。家庭用製品カタログでは、現在の硬化していないTDI製品として床のコンクリートのシール材を挙げている(NIH,2010)。暴露研究に使われたその製品と床の塗料はまだ購入が可能で、その製品が専門家だけに使用を限っているのかどうか確かでない。オンライン検索では、床の塗料とシール材は、一般の消費者が購入可能な硬化しないTDIを含む製品の主なタイプであるように見える。
さらに、合成表面改質工業では、室内表面用と室外表面用のどちらにも、様々なポリウレタン成分を製品に配合して使っている(DOW,2011)。ポリウレタン塗料は、専門家のためのコンクリート封止、防水壁面、床の仕上げ材に使われる。“専門家使用向け”と呼ばれる製品はまた、消費者が購入して使うことができ、あるいは消費者がいる場所で使うこともある。ポリウレタンのシール材は、自動車分野で多様に利用され、最も多くは風よけ窓と横窓のガラス取付けに使われている。 消費者による接着剤とシール材の使用は、2009年後半のこの分野の工業用展望に記されているところでは成長分野である。この成長は、エネルギーを節約したい、あるいは自分の家を改造や修理する費用を節約したい家主の、日曜大工作業が増えることを反映していて、業者と消費者が普通に接着剤を使い続けることになる(Pianoforte,2009)。発泡材スプレイ工業では、彼らの製品が日曜大工によって成長していることを認めて、最近は家主や専門家、特に日曜大工たちに向けて発泡材スプレイの使用法についてウェブサイトを立ち上げている(ACC,2010)。
イソシアネートを代替することは、環境的にも経済的にも親切な方法として重要な挑戦である。そして、従来のポリウレタンより安全な代替品になりうるイソシアネートを含まない新しいポリウレタンの品種が、2つの研究グループによって報告されている(Figovsky & Shapovalov,2006;Javni et al., 2010)。他にもイソシアネートを含まない柔軟な発泡材料(Soudal,2010)と、乾燥しない食品中にイソシアネートが混入するのを防ぐことの出来る迅速硬化性の“イソシアネートを含まない”柔軟な食品包装接着剤が報告されている。記事では、ホルムアルデヒド-ウレア接着剤に置き換わることを目指した大豆ベースの接着剤が、プレシデンタルグリーン賞を受けた(EPA,2009)、しかし大豆ベースの接着剤がポリウレタン接着剤の代替として十分かどうかはもっと研究が必要である。然るべき代替えの研究と開発が直接製品の代用というゴールを目指した近道である一方で、既製のポリウレタン製品の危険性を知らせ安全な使用法を教育することで、安全に使用することに焦点を当てるのも重要である。
Ⅴ. 危険性の要約
環境と生物への危険性
環境毒性が低いとされるので、TDI化学物質に暴露に伴う危険性は、環境への影響ではなく人の健康への影響に集中している。TDIとその劣化生成物の実験的環境毒性データは、水生生物には低毒性でやさしいことを示している(Curtis,et al., 1978; MITI,1992; Tadpkoro et al., 1997;Pedersen et al., 1998)。他の毒性データは、2,4- TDIと2,6-TDIに暴露した植物や土中の虫など陸生生物(Van der Hoeven, et al., 1992a; Van der Hoven et al., 1992b)と鳥(IUCLID,2000)には、には効果が低いらしいと示唆された。
人への危険性
ジイソシアネート暴露で引き起こされる人への健康危険性のほとんどのデータは、職業作業者に基づいている。それらのデータはジイソシアネートへの暴露が皮膚炎、皮膚と気道の刺激、免疫過敏性、と喘息を起こすことを示している(NIOSH,2006)。呼吸と皮膚のジイソシアネートへの暴露は、イソシアネート喘息の発現に寄与していると考えられている(Bello et al.,2007)。イソシアネートへの暴露は仕事での喘息の主原因であるとよく記されていて、暴露が行き渡った労働者では1-20ぇと推定されています(Ott et al.,2003;Bello et al.,2004)。ひとたびジイソシアネートで過敏になった作業者はその後の暴露でひどい喘息を引き起こす。 スプレイ作業や加熱の典型的な過程で、空気中に発生した蒸気と霧に作業者が皮膚と呼吸を通した暴露が増えるにつれて、喘息の発症はますます多くなる。たとえば、イギリスの健康安全委員会がイソシアネートを含む塗料吹き付けていた車両修理工が喘息を起こすのにイギリスの労働人口に比べて81倍高い喘息になるリスクがあると報告している(HSE 2009)[http://www.hse.gov.uk/mvr/priorities/isocyanates.htm/]。ジイソシアネート喘息が少ないケースほど組み立て作業の空気中イソシアネートが低く、またジイソシアネート喘息を起こしたほとんどの作業者は、長い期間(数か月か更に長期間)の暴露経験があったという報告がある。しかし、過敏反応または喘息を引き起こすイソシアネート暴露の最小値は知られていない。さらに、免疫反応とそれに続く人への障害は種々様々である(Redlich et al.,2006)。死亡事故は、過敏になった人のジイソシアネート暴露と関係づけられると報告されている(NIOSH,1996;ACC,2005)。EPA IRISプログラムでは職業暴露データに基づいて、指針濃度を作った。
職業的でないTDIへの暴露の報告はほとんどない。しかし準職業的な喘息がTDIの偶然の暴露で生じたらしいという報告がいくつかある(De Zotte et al.,2000)。また、TDIに対する抗体が、ポリウレタン発泡材工場の近くに住む住民らに検出されていて、施設からの環境汚染で暴露されたことを示している(Orloff et al.,1998;Darcey,2002)。
実験動物での毒性
急性、亜急性および慢性の動物暴露研究において、1%以上で濃度の増加につれてひどくなる鼻の刺激を伴い、呼吸器が標的器官であった。吸入暴露に伴って、TDIは体全体に均一に分布した(Collins,2002;Gledhill et al., 2005)。TDIは皮膚、目および肺の刺激、長い期間の吸入暴露で肺機能の進行性の不調を起こし、動物に皮膚と呼吸器の暴露による呼吸器過敏性であった(Collins,2002)。クロス増感は、マウスで、そして、人間のMDI、TDIとHDIの間でMDI、TDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とジシクロヘキシルメタン・ジイソシアネート(HMDI)の間で観察された(O’Brien et al.,1979)。
TDIはvitroの遺伝子突然変異分析においてポジティブで、vitroマウス小核分析において否定的である(Collins,2002)。
動物実験のデータは、TDIが発がん性である場合があることを示している(Collins,2002)。最近の動物実験のデータは、市販級のイソシアネート(2,4-と2,6-TDIの80:20の混合物)に暴露すると癌が発生することを示している。ラットとはつかねずみのTDIに対する反応はOSHAの発がん性可能物質という等級の基準になっている(29CFR 1990.112)。NIOSHはTDIとその異性体への職業的暴露を最小にするように勧めている(NIOSH 1989)。
TDIの発がん性影響は(Loeser 1983;NTP 1986)国際がん研究機関(IARC)でも、また世界保健機構(WHO)でも研究さIARCはその研究データでTDIが動物に発がん性であると結論している。WHOはTDIが人に発がんの可能性あるとして取り扱うべきであると結論している。さらにまた、NIEHSはその発がん性に関する2011年のレポートの中で、TDIを人に発がん性が予想されそうなものとして数えている。
Ⅵ.運命特性要約
加水分解は、ジイソシアネートの全体的環境運命と、移送と生物濃縮可能性を優先的に決定しているプロセスである。商業的にいろいろなポリマーを形成するために、ジイソシアネートは、他の化学物質(すなわち多価アルコール)と室温で反応する。データは、空気中湿気である水がTDIを加水分解してそのアミン、やはり危険を伴うトルエンジアミン(TDI)を形成することを示している。表面の水の中での急速な加水分解は、寿命と環境中での生物濃縮を低下させるが(Yakabe et al.,1999)、湿度が低い条件下では、ジイソシアネートは相当の距離まで移動し、吸入されるのに十分に長い間安定である(EPA,2008b)。その見かけの急速な反応時間にもかかわらず、通常空気中でのジイソシアネート蒸気とTDAが湿度とどう関係しているのかは不明確である。(Dyson&Hermann,1971)。形成された加水分解生成物が刺激性で吸入暴露の可能性があるので、空気への放出は特に考慮すべきである。
Ⅶ. 暴露特性の要約
職業的暴露
1996年には約280,000人のアメリカ合衆国の勤労者がジイソシアネートに暴露したと推定され(NIOSH,1996)ているが、現在では工業の成長と新しい応用で(Bello et al.,2007)この推定はもっと増えていると予想される。OSHAは、許容暴露濃度を通してTDIに暴露している作業場に注目している(PELs)(付録2参照)。PELsを超える暴露レベルで暴露される勤労者を減らすために、OSHAは、技術的な制御(例えばベンチレータ)や管理制御が解決できないか十分にレベルを引き下げるのに失敗したときには、PPEの使用を要求している。
TDIがある全ての工業、商業、または組み立て作業で、TDIに暴露する可能性がある(DOW,2009)。TDIの高い揮発性のために、製造と仕様の全ての段階で暴露が起こりうる(NTP,2005)。ポリウレタン発泡材製造で(Ott et al.,2003)、特に発泡ラインのトンネル内や新しく切りだされた塊に密接に接触するところでの変動条件で(Cummings & Booth,2002)、TDIに関するOSHAのシーリングPELを超えた短期間の空気中濃度は、報告され続けている。NIOSHの評価試験では個人および地域サンプリングの両方で、床仕上げによるTDIの暴露過多が文献に記されている(NIOSH,2004)。もう一つのNIOSHの評価試験では、柔軟なポリウレタン発泡材作業者について、空気中のTDI濃度は勧告暴露限界より低かったが、作業者について呼吸器(TDI誘起気管支炎と喘息)、粘膜、および皮膚の問題が記され、それらの症状はTDI暴露の指標となっている(NIOSH,1998)。進行性の職業喘息に影響されやすく過敏になった勤労者達は、8時間労働時間に対するTDIおよびMDI限界閾値(TLV)である5ppbの1%以下の濃度のイソシアネートモノマーであっても反応することがある。TDIについては、NIOSHは暴露を可能な限り引き下げるように勧め(NIOSH,2005)、またACCIHは、変更意検討告示(NIC)によって、2,4-および2,6-トルエンジイソシアネートの2011年の閾値TLVsを今の閾値より引き下げることに注目している。数字は付録2を参照。
自営業と小さな農園では硬化しないポリウレタン製品を使う時の危険性情報や払うべき適切な注意に気を付けていないだろう(Krone,2004)。MUC製品の残りの利用の間の空気中暴露に関する一つの研究において、何等の防御用具も使わずに、ウレタン(MCU)床仕上げに硬化しているTDIを含む蒸気を作用させた作業者を観察した(ATSDR,2005)。
EPAは、暴露を防ぐ話し合いを改善するのに重要ななことだが、多様な製品の硬化に要する時間について、異なった状況では不確かであり、例えば取り掛かる時間などのような、付け加えるべきデータが必要なことに気が付いた。
さらにまた、OSHAとNIOSHが作業場空気濃度を推定する方法を開発している一方で、現行の方法が空気中濃度を低く推定しているので、打ち消す因子を使ったり、改良した分析方法の開発を推し進めたりしなければならない。皮膚暴露検出の方法は、開発の初期の段階にある。皮膚暴露と過敏性と硬化しないイソシアネート群の能力との結びつきの間にいくつかのデータのギャップがある(Strecher et al., 1998; Bellow et al.,2007)。連邦において、イソシアネートモノマーのみが(例えばTDIとMDI)が注目されていたけれども、同様に反応性のイソシアネートを含む市販の費者製品に、同様なポリイソシアネートが広く使われている。EPAは消費者暴露の可能性について十分認められた様子がないと考えている。そしてOSHA以外は、MDI,TDIとその他のポリイソシアネートでの作業者に注目し、OSHAが職業場面で取り決めたものに要求しているのと同じような技術的制御、PPEや危険性情報の使用の対象にする必要があるだろうと考えている。
消費者/一般市民の暴露
消費者、脇の人、ビルの住人(子供を含む)、趣味の人、日曜大工たちはたぶん、何かの製品中の硬化しないTDIにさらされる。長年にわたってある種の消費者用製品中の、TDIがMDIに置き換わるようになってきた(ACC,2009)。ある工業製品安全アセスメントは、硬化しないTDI製品は工業用用途にだけ向けられているといったが(Dow,2009)、しかしそれにもかかわらず、多くのそのような製品がインターネット上で配合者や販売者からずっと遠くの供給網を通して購入でき、それらを手引きした人に何らかの制限をしようとしても不明である。職場の規則で保護され、またほとんどのケースでは危険情報に接しイソシアネートを使って働く訓練も受けている勤労者と違って、ほとんどの消費者はTDIを含む消費者用製品に危険があることに気が付かない。結果として、不十分で不適当な危険の伝達が消費者の暴露を引き起こす。もし消費者が危険に気付いたとしても、彼らは適切な注意を払わないであろう。
直接使う消費者に豊富ではない情報があったとしても、多くの近くの人がTDI製品に暴露されることが、コンクリートの中庭の防水材からのTDIの発散(Kelly et al.,1999;Jarand et al.,2002)、TDIを含むウレタンを木の床に塗布した後のビルディング中の空気試料からのTDIの検出(NYC-DOHMH,2010)、などとの文献で見出される。さらに、硬化しないTDIにさらされた後で特別な吸入チャレンジで、職業以外のTDI喘息が2つのケースで報告されている(De Zotti et al.,2000)。
大人が受け取ると同じレベルのTDI蒸気にさらされた子供は、大きな肺表面積:体重の比率および精密な体積:重さの比がふえるために大人より多く飲み込む。TDIの重さは空気より重いので床に接した層をなすだろう。子供は化学製品で処理された表面に這い回り、座り込み、残りが付いているかもしれない玩具などで遊び、同じ部屋にいた大人よりも吸入する毒物が多い(ATSDR,2002)。子供たちが体重:表面積の比が大きいために、皮膚を通して吸収する毒物の体積もより大きい。子供たちは彼らが降下しないTDI製品を使ったり傍にいたりすると、彼らは注意書きのラベルと安全注意書きを理解するには十分に発達していないし、暴露症状を体験しても活動をやめないので、より大きな暴露を受けるかもしれない。さらにまた、子供たちはそこに長くいるかもしれないので、TDIなんぞの物質の暴露し方と暴露から受ける障害の説明の双方から見ても、彼らは長期間の暴露が一層深刻かもしれない(ATSDR,2001;ATSDR,2002;EPA,2008a)。喘息の子供は特に特に暴露で傷つきやすい;彼らは気道の炎症で狭くなるのに敏感であり、その結果として彼らの小さい呼吸器系に比較して大きな負担となる(NIH,2011;Transande & Thurston,2005)。
ジイソシアネートで働く専門家のための多量な暴露データと対照的に、消費者と降下しないTDIを含む市販製品の使い方と暴露経過についての暴露データは少ししかない。空気中でのTDI濃度特性についてのデータを加えることが必要である。応用技術、製品の成分、硬化しないTDIの可能性に関する測定方法などの広範な因子がどうなっているかわかっていない。さらにまた、作業者のPEL(個人用保護具)は消費者の防御に十分でないので、存在している濃度を作業場での暴露限界濃度と比べることは適当ではない(Redlich,et al.,2006)。
Ⅷ.リスク管理の考察
同じようなタイプの硬化していない製品が 専門家と消費者湯に購入可能である。多くの著者がその用途増加のように、ポリウレタンの多用性があることを述べている。EPAは、non-OSHA-regulated? 状態と同様な暴露の可能性があると考えている。降下しないTDIを使う時には、主体のユーザーと傍の人は可能性があるリスクに気づき、しかるべき注意をすべきである。降下しないTDI含有製品がどれだけ多く消費者に販売されているのかわからない。しかしながら、もし降下しないTDI製品が専門家によって使われているならば、彼らは運動場や体育館の床のような傍に人がいるところで使うことができ、特に子供もいることを考慮すべきである。道路で降下しないTDIを使うことがあるところでは、暴露の可能性があることを考慮すべきだと定めることは重要である。更に、この活動計画の範疇以外であるが、しかし数種の個人用健康保護製品が硬化しないジイソシアネートを含むことがある。そうはいっても、そのような製品からの暴露が蓄積的なジイソシアネート暴露に寄与することもあろう(Sommer et al.,2000;Donnel et al.,2003)。上述の因子は、これらの化学物質管理活動にあたって、子供へのジイソシアネートの暴露の起こりうるリスクについて高度の考慮が払われるべきだと示唆している。
Ⅸ.進行中および計画中の規定と関連活動
TDIおよびその関連ポリイソシアネートは、いかに要約するように、種々な法規および関連活動の主題になっている。他の物も含めて、付録2に、詳細を書き加えた。
EPAの規制活動
TDIは大気清浄活動によって、危険性大気汚染として、RCRAとCERCLAの下で危険廃棄物同様に規制されている。ジイソシアネートはその系列およびTDI単独で毒発生物リストの対象になっている。TCSA(米国化学品健康影響管理機関)の下でAPEは、工業から情報を求めるためにTSCAセクション8(a)と8(d)を使っている(see 40 CFR parts 712 and 716)。EPAはまたTSCA8(c)とTSCA8(e)でのジイソシアネートに注目した役割も受け持っている。ジイソシアネートはTSCA New Chemicals Program Chemical Category であり、また何らかの新しいこのカテゴリーに入る化学物質は今後、予備的製造通知を提出するTSCA section 5に従って規制される。
ポリウレタン発泡材スプレイ(SPF)連邦協力推進管理と研究
2009年にEPAはOSHA、NIOSHおよびCPSC(消費者用製品安全委員会)との多重協力で、家庭や学校での断熱と空気を封じるポリウレタン発泡剤スプレイ作業の間にイソシアネートその他の化学物質に暴露する可能性について評価し位置づけるために、会議をもった。商売と日曜大工の応用者は建築作業者と同様に、しばしば呼吸器と皮膚の障害に気づかない。応用者と作業場所の仁井田他の人たちも十分なPPEを着用していない。作業の間屋内に残っていたり製品が十分に硬化する前にその場所に入りなおしたりした建築作業者はリスクがある可能性がある。連邦政府はポリウレタン会社と一緒に生じうる危険性の情報交換、応用者の訓練、イソシアネートと他のSPF化学物質への暴露を防御するための最善の作業場での実行を確かめるために働いている。それに加えて、連邦のグループは、厳密な研究がSPF製品を使いまた硬化する間の、全体のイソシアネートグループ(TRIG)の測定と評価を要するということを確認している。EPAはその連邦のパートナーやポリウレタン工業およびその他と一緒に、硬化しないイソシアネートを含むポリウレタン製品、特に消費者向けの製品についての、製品安全知識とラヘル表示の改善を確実にするように働き続けよう。EPAはまた、安全な代替え化学物資の開発を奨励する緑の化学物質活動おも考えている。
カナダ.
2010年5月12日にカナダは、TDIが発がん物質であり呼吸器系に永久があると決定した評価に従って、TDIを毒性物質のリストに加えた。カナダ環境省は、ポリウレタンおよびその他の発泡分野についてP2公害防止計画告示を発行した。危険製品活動の下でtdi類を含んでいる発泡材でない消費者製品の研究活動の提案も開発されている(Environment Canada,2010)。
IARC.
国際がん研究機関(IARC)はTDIを人に対して発がん性の可能性ある物質と格付けした(IARC,1987b)。
Ⅹ.次の段階
このレビュウを指揮しながら、EPAは、TSCAセクション4,5,6,および8での取り締まり、その他の連邦政府との共同活動、および上述のような自発的活動を含むたくさんの可能性ある活動を考えた。EPAのTDIとそれに関係あるポリイソシアネートのふるい分け程度のレビュー(Appendix,1)に基づいて、EPAは次のようにする;
1.(A)SCAセクション5(a)(2)のもとで、新しく使う消費者製品中の硬化していないTDIとそれに関するポリイソシアネート類使用を設計する重要使用規則という規則を作り始める。Ⅵ.で示したように、仕様と代替え要約、工業メンバーは硬化しないTDIは消費者用製品では使われないと声明している。
1.(B)しかしもし、提案されたSNURに消費者用製品に硬化しないTDIが使用されていることを指摘する公開のコメントがあれば、新しく使い始めたわけではないので、EPAは1年以内にそのような使用を自発的になくすような開発を工業と一緒に働くことを考えよう。
1.(C)もし自発的に使用をやめることに同意しなければ、あるいは完全には同意しなければ、EPAはTSCAセクション4にのっとって、消費者製品中のTDIとその関連ポリイソシアルートルイの暴露を調査研究するような規則作りを考えはじめよう。
2.大きな良い効果を主張するならば、TSCAセクション8©にのっとって確認するためのテータ要求、そして と、適切な非公開の健康と安全の研究を前もって報告することについてのTSCAセクション8(d)の規則の適用を発布する。
3.硬化しないTDIを使うような代表的な場所での暴露観察研究を要求するためにTSCAセクション4にのっとった試験規則を考え始める。
4.一般市民が暴露されるような場所で硬化しないTDI製品を通常の商売で使うためにTSCAセクション6にのっとった規則作りを考え始める。
5.規定された或はまたは自発的な活動で、消費者製品の中に硬化しない形で存在しそうな付加的なジイソシアネート類とそれに関係あるポリイソシアネートを鑑定することを考える。
付録 1.
表1 TDI単量体(モノマ-)と関係ある同族体および高分子(ポリマ-)
No |
CAS番号 |
CA 索引名 |
頭字名 |
一般名 |
1 |
91-08-7 |
ベンゼン,1,3-ジイソシアナト-2-メチル- |
2,6-TDI |
2,6-トルエンジイソシアネート |
2 |
584-84-9 |
ベンゼン,2,4-ジイソシアナト-1-メチル- |
2,4-TDI |
2,4-トルエンジイソシアネート |
3 |
26471-62-5 |
ベンゼン,1,3-ジイソシアナトメチル- |
TDI80/20 |
トルエンジイソシアネート |
4 |
9017-01-0 |
ベンゼン,1,3-ジイソシアナトメチル-,ホモポリマ- |
ポリメリック TDI |
ポリ(トルエンジイソシアネ-ト) |
表2 TDI 2量体(ダイマ-)と3量体(トリマ-)
No |
CAS番号 |
CA 索引名 |
頭字名 |
一般名 |
5 |
26746-90-0 |
1,3-ジアゼチジン-2,4-ジオン,1,3- ビス(3-イソシアナトメチルフェニル)- |
2,4-TDI ダイマ- |
トリレンジイソシアネ-ト ダイマ- |
6 |
26603-40-7 |
1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)- トリオン,1,3,5-トリス(3-イソシアナトメチルフェニル)- |
TDI トリマ- |
トリレンジイソシアネート トリマ- |
付録2―TDIの規制と暴露限界
EPA. EPAの積算リスク情報システム(IRIS)プログラムはTDIの指針値(RfC)を、職業的に暴露された人々が肺機能(FEV1)の慢性的な低下を起こす限界から、7x10-5mg/m3とした(EPA,1995)。
OSHA. OSHAはジイソシアネートの危険性を、一般工業、造船所、建設工業の作業所における基準値および許容限界で示した。
OHSHのTDIモノマーの許容限界(29CFR1910.1000)は、天井値で0.140mg/m3(0.02ppm)である。OSHAはまた、技術的・専門的な管理で許容限界以下に下げることができないときや効果的でない時に、作業者がさらされる危険を減らすために、個人保護具(PPE)使用を命じた。
NIOSH.1996年と2006年にNIOSHはイソシアネートにさらされる作業者がある状況で死んだり喘息を起こしたりすることを防ぐため警告を発した(NIOSH,1996;NIOSH,2006)
NIOSHはまたTDIが職業的発がん物質と考え、暴露濃度を可能な限り最小に低下させるように勧告した。
ACGIH.米国政府産業衛生医学者会議(ACGIH)。TDIの皮膚過敏性を起こさないが呼吸器過敏性を起こすような閾値(TLVs)を決めた。このことは、皮膚を通してイソシアネートが吸収される可能性に注意するようなTDIの閾値に“皮膚項目”を加えることを進められる十分な情報がないことを示唆している。
ACGIHはTDIについて、平常1日8時間で週40時間働く場合について時間荷重平均濃度(TWA)で閾値を0.036mg/m3(0.005ppm)、15分間の短時間暴露限界(STEL)を0.14mg/m3(0.02ppm)と決めた(ACGIH,2009)。
2010変更のための告示(NIC)で記したように、2011年のACGIHのTLVs(閾値)は、2,4-TDIおよび2,6-TDI(CAS584-84-9;91-08-7)について、0.005ppmであったものが0.001ppmに引き下げられた。
California,OEHHA. 2010年4月に環境健康危険性調査カリフォルニア事務所(OEHHA)は、提案したTDIの指針値(RELs)を説明している“コメントのための”素案を出した。それは、幼児、子供などの他敏感な少数者への起こりうるさまざまな影響を配慮して修正されたものである。
CANADA.2010年12月12日にカナダは、TDIを、発がん性があり呼吸器系に影響するものと決めたアセスメントに従って、毒物リストに書き加えた。カナダ環境省は、ポリウレタンおよび他の発泡部材について、P2 公害抑制計画告示を出した。TDIsを含む発泡しない消費者用製品を調べるために提案された活動が危険製品条例の下で展開中である。
2005年にカナダ(オンタリオ州)ではTDIについての空気質標準を新しく低くした。
(http://www.ene.gov.on.ca/envision/env_reg/er/documents/2005/airstandard/PA02E0010.pdf).
IARC.
国際がん研究機関(IARC)はTDIを人に癌を発生させる可能性があるものの等級にした(IARC,1987b)。